さよなら和敬塾南寮
技術の話はない、プライベートな日記です
寮をみてきた
私が大学生の時に住んでいた和敬塾南寮 <わけいじゅく みなみりょう> が今期を持って学生の入塾をやめるとのことで、友人と連れ添って見学にいってきた。
結局取り壊しするんだっけ? 大事な点を確認し忘れた
和敬塾とは
公益財団法人和敬塾は、東京都文京区目白台にある男子大学生・大学院生向けの学生寮。1955年、前川製作所の創業者である前川喜作によって創設された。
文京区 目白台に位置する学生寮で、ホテル椿山荘や東京カテドラル、日本女子大が立ち並ぶ目白通り沿に広大な敷地を確保して建っている.
とはいえ正門はひっそりとしており、存在を知らなければうっかり見過ごしやすい
入塾に当たって特にどこの大学かは問われることはない. 早稲田に近いこともあって早稲田の学生 (特に「文系」の学部) がうじゃうじゃいた
寮
塾の建物は (当時は) 東西南北に 寮 として別れており、それぞれで独自の「系」ができていた.
塾全体で理念や方針に沿うように先輩を敬い・後輩の面倒を見る伝統・文化が徹底される (今はどうかな?)
だが、寮( = 建物) が違うと寮生間で形成されるマイクロなカルチャーは大いに異なる
外から見れば同じ敷地内に住まう寮生であっても「どこの寮に住んでいたか?」という点で、和敬で培うアイデンティティが全く違ってくるのだった.
その差異を事細かく説明するのは難しいのだが「あっちの寮は俺たちとは違うんだな」という空気はみな肌感覚で共有していた
かつてはそれぞれの寮に100人ほどの学生が住んでいたが、数も減ってきたと聞く
巨大な集団生活を支える建物の管理や安全の管理 etc … は、和敬塾で雇用された職員さんが常駐して日夜面倒を見てくださっている.
職員さんの側からは、寮生の行動に深く干渉しないようにする暗黙的なルールを尊重していたように思う. しかしながら、我々が社会通念上当たり前のモラルや法を逸脱する行為には厳しく叱っていただくこともあった.
言うても 10-20代のガキが閉鎖的に集う場なので間違いをやらかすのだ. 反省も多い
ノルウェイの森の南寮
続いて、和敬塾に関するゴシップ的なネタを書こう. ここはかつて村上春樹が在塾していたことが有名だ.
『ノルウェイの森』でワタナベくんが住んでいた寮のモデルと言われている. 『蛍』でも同様にモデルとなっている.
... 残念ながら(?) 私が住んでいた 南寮 は春樹が住んでいた 西寮 とは別である.
南寮も西寮も近い時期に建ったはずで、細かいところまで設計が類似している. ということでだいたい一緒. (注意: 西寮は既に改築されており、南寮と乾寮のみが旧式のデザインで残存している )
小説では毎朝国旗掲揚をする場面が描かれているが、実際には祝日だけ行なっている. 和敬の日常生活においてはのんびりした学生寮で、政治的な空気を感じることはない
小説と違って(?) 寮長さんはフレンドリーで優しいよ
訪れたのは3月でまだ緑のボリュームが控えめだが、夏場には「森」と呼ぶのがふさわしい深い緑豊かな光景になる
このような背景から、自らを小説の主人公 (あるいは突撃隊やナガサワさん) に同化させ、耽溺して小説を愛読していた寮生も多かった.
私もそのような浮かれた一人だったのは言うまでもない.
「やれやれ」
生活空間
さて、現実に戻ろう. ここは勉学のために上京してきた男子大学生が住む、共同生活の空間なのだ.
かつての空気と変わらない南寮内を闊歩して懐かしむ (許可は得ています)
ヒンヤリと冷たい、無機質な廊下
かつての私の部屋
一年時に私が住んでいた部屋は4階北側に位置していたが、現在は寮内で共有の設計台(ドラフター)を置く部屋になっていた 😯
当時 私も建築学科に在籍していたので、部屋の半分を埋めてしまうほどに巨大なドラフターを中古で購入し 6畳の自室に持ち込んでいた. 過去の私の部屋に似た空間が再現されており、非常に感慨深い
椅子や机は寮からレンタルもできるのだが、邪魔 であれば返却もできる. 自室で真面目に勉強するやつとそうでないやつがはっきり分かれる. 私は二年次に机を返却した. その後の勉学がどうなったか ... 語る必要はあるまい
屋上から池袋が展望できる.
『ノルウェイの森』『蛍』では、近所のホテルから蛍が飛んでくる描写がある. 小説と同様に、塾の西側にはホテル(椿山荘)が位置し、椿山荘が夏場に蛍を放流するイベントがあるので春樹はこれをヒントにしたのだろうか?
だが私は一度も蛍を見ることはなかった
共有のラウンジスペースは、時間が止まってるがごとく私のいた頃と変わらない. まぁ これが汚れたり、散らかってたりだな ...
寮対抗の体育祭で受賞したトロフィーが代々引き継がれている. リレーで優勝したなぁ.
おっと ... 水回りが汚れがちなのはご愛嬌
一通り寮内を見回ったところで、食堂で昼食を頂いた. 寮生の食事は食堂スタッフさんによって調理していただく. 私たちがいた頃から勤続されているスタッフさんがいて嬉しくなった
過去から現在へ
過去の思い出に引きずられつつも、そこから10数年も経つと我々のライフステージも様変わりしている.
みんなの暮らしっぷりはガラっと変わってしまっているし南寮も変わってしまうが、ここの建物が無くなっても何らかの形で「南寮」が後世にバトンタッチされ、引き継がれていくことを感じるのであった
「お、お前が今度の新入生か〜」「自己紹介させていただきます!」
和敬塾の見学を希望される方へ
和敬塾は学生の寮であり、そこに住まう人々のプライベートな生活空間です.見学を希望される方は事務所までお問い合わせて頂けると正式にご案内していただけると思います.